ミッキーマウスの耳は横を向いても重なったりはしない/末下りょう
ッとつかんでみつめたら
すごく白い目でみるよね
かまわず髪のなかに顔をうずめると
そこでいつも道に迷って きみを見失ったりする
たぶん見失うからいっしょにいれたりもする
瞳を大きくしても 肌に色がついても
ミッキーマウスの耳はいつまでも重なりあわないよ
ふたりに先がないのをしってるきみをずるいとは思わない
きみはなにも言わない
どこかで重なった線はすぐに離れて遠ざかっていく
ちいさな点をそこに残して 風もないのに手を振って
それはさみしくてきっとすてきです
奇跡がふたつ続いて どうでもよくなるまえに
特別なものにしよう
鼻先にみつけた耳に噛みつくとぼくは
さかしらなピラニアになり
口のなかの髪の毛が 絡まったふたりをほどいていく
ミッキーマウスは真っ白な手袋で真っ黒な手をいつもかくしている
その孤独にくらべたら
ぼくはまだなにも守るものがない
ミッキーマウスのまるい耳はどこを向いても重ならない
適切な距離をいつまでもそこに補完している
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