夏の葬列/為平 澪
 
西日に揺れる色褪せたカーテンの隙間から
焔に焼かれた夏の葬列を見送る
背を丸めて折れ下がるだけの向日葵は
昼に立ち止まり、夜に顔を奪われたまま
晩夏を歩む
背骨を晒し腕も手も顔も腐らせ
「老い」は立ち止まることができない



夏との闘いを 乾いた涼風が脳裏から消し去ってゆく
遠い波にさらわれた悲鳴、あれは誰の灯だったのか
顔を焼かれた者の墓標
喪失した名は誰が優しく呼べただろう
ただ、横たわることしか後がない無印の花について。



お前の父は蝉の抜け殻ばかり集める一生だったと、
大輪の面影を窺うように
母がうつむいた夏
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