帰参/土田
ていた
いつからか吸っていた煙草の煙を吹き飛ばす車の音
いつもは聞こえていた
いつからかエアコンの微風音をさえぎって
ゲームで上昇した熱をさげるパソコンのファンの音
いつもは聞こえていた
いつからかラップ音もしない天井の隅を目がけ
亡くなった祖父に都合のいい願い事をするために合わせた手の音
いつもは聞こえていた
いつからか少しづつ長くなっていったため息の音
いつもは聞こえていた
いつからか手のようになっていたキーボードと
口を歪ませ鼻を鳴らす音
いつもは聞こえていた
いつからか生きてもいない事を
割り切ってしまった心臓の音
いつもは聞こえていた
いつもは聞こえていた
いつもは賑やかで煩くて
いつもはひとりでいる事に必要で
ずっと今までに甘えていた音
いつもは聞こえない
いつもは聞こえない
いつもはかき消されていて
いつもは必要がなくて
もうずっと昔に忘れていた
からっぽの自分の音
そしてずっと書けないで諦めていた詩が完成した音が
がらんとした部屋の隅ぽつんと鳴った
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