秋の旅/葉leaf
限定はしかしどこにもない
秋には複数の波がある
それぞれがそれぞれの方向と波形を持っている
今、一つの波が最大の高まりを見せた
そして今、その波が無数の波間に飲まれていった
駅はさながら廃墟のよう
これだけの人がにぎわっていても
これだけ電車が往来していても
無駄を省いた機能だけの造作は廃墟的で
墓地のようにむき出しに
死を語っている
この風景のどこかに海が隠れている
こんな内陸の山に囲まれた風景には
あの圧倒的な海が隠れている
それは海ではないかもしれない
だが途方もない単純な広がりが隠れている
風景は疲労を知らず
世界は疲労を知らない
私だけごく単純に疲労している
私は疲労において
世界の外側にいる
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