ペーニャ/末下りょう
 
張りはいない
まだいのちが自販機の下で鳴いている かりそめの翅音
ペンキの剥げた水底に鉄のスパナが沈んでいる
奪ったものは奪われて 泡の渦になってさようなら
セコいバタ足と25メートルの隙間にオダブツ
空耳しか聞こうとしない 遠くからサイレン
飛び込み台にまたがり水から抜いてイジるふやけたつま先の皮から目指したはずの場所がむきだす

その過去には内容がなく 未来には形式がない
白線もなく言葉を焼き捨てながら食い尽くしてすべて吐いた夏

笑えた保健体育と引きかえにゴミ箱で生まれる小蝿
椅子取りゲームで大人びた転校生の胸元にわざと倒れこんだ
通学路の草むらのビニール袋に隠した
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