ひたい/木立 悟
ひたいに浮かぶ舟の上から
手をのばし 指に触れていき
水紋は
遠くへ遠くへひろがってゆく
とても大きな朝があり
どこかへ低く消えてゆく
建物の陰に残る光
開け放たれた扉の光
踏みかためられた雪の道は
みな作り物のように優しい
会釈より白く 遠回りをする
川にあふれる舞いの真昼に
流れ込む鳥の声 水の声
蜘蛛の巣の空へと
響きゆく声
風のかたちに並ぶ雪から
異なる道は現われて
音は遅く 遅く届く
壊れた家の窓の光が
水紋の切れ端に触れてゆく
午後は ふいにやってくる
鴎と鴉が並んでとまり
胸の奥
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