九人の野口/
もり
なぜいつも九千円しかおろさないんだ?
おれの問いに 長谷は
枚数が多いほうが安心するだろう?
と、九人の野口英世を
見つめながら
得意げに言った
そうやって
笑い飛ばせたあの頃
郵便局を出たおれは
もはや九人の野口英世ですら
心細くなってきて
遠くアフリカの大地へ
心だけでもと逃げてみるけど
たちまち
ジープに乗ったハンターたちが
やってきて また だめだった
来月 長谷は車を買うという。
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