螺旋/伊藤 大樹
手に負えない重さ
月明かりに映えるシーツに残るわずかな質量
コーンフレークと牛乳の朝
時間が白い霧となって降っているね
透き通ったグラスは
飛び散ろうとするあなたをゆったりと受け止め
かすかな甘みの ゆたかなたゆたい
なんてかろやかなのだろう
わたしには何もかもが重い
時間がらせん状であったらいい
巻貝のようであったらいい
誰もの遺伝子がそうであるように
ひとつの夢とひとつの愛が対合して
新しいもうひとつの風を生む
水底に沈んだ宝箱のように
しずかに横たわって
この部屋に水が満ちてきたら
冷たいコンクリートの柱に凭れて
もういちど 窓の外になつかしい景色をみつけよう
後味の悪さを巧妙に繕って隠すこと
きっとそれは どんな惨たらしい殺戮より
はるかに暴力的なことだ
そうやってあなたはいつも
ズルい負け方を選ぼうとする
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