あの子/ブルーベリー
庭の隅にあの子はいつも 忘れられては置き去られ
白いお顔は赤くなり やがてはそばかすだらけになった
忘れられてもあの子は僕を 忘れてくれやしなかった
一冬越したあの子は違う
置き去ったのはどちらだったか
あの子は今や夜を飼い 獣をじっと待っていた
料理本を買い込んで 何かをずっと待っていた
あの子ほんとは癖っ毛で
そのくせほんとは雪より白く
すぐに忘れられちゃうような
そんなだった そんなんだった
庭の隅にあの子はいつも
庭の隅にあの子はいつか
身体に穴開け落ちていた
「ずっとその手を待っていた。」
つつかれむしられ黒い顔
最期にそう言い事切れた
庭の隅にあの子はいつも 忘れられては置き去られ
「ほんとは大事にしたかった。」
伸べられなかった手はずっと
時を待っては震えてた
あの子をいつかこちらへと
時を待っては震えてた
それでも僕はその時を
君に群がる者どもを
愚かにずっと忘れてた
庭の隅にあの子はいつも ずっと立っていたっていうのに
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