わたしは/ただのみきや
 
海が見える新興住宅地
まだ買い手のつかない広い区画には
イタドリ ススキ タンポポ 
何処からともなくやってきた
柳や白樺の若木も生え
地面は覆い尽くされることもなく
盛り固められた土が腐葉土と異なる地肌を見せる
セキレイが歩く 縫うように 立ち止まり また
キリギリスが鳴き放つ どこか田舎者を匂わせて
もうすぐ嵐が来るだろう
ぬるく湿った風が若い柳を躍らせる
わたしたちもまた断絶された歴史の表層
その作られた土壌にたまたま生まれ落ち
感覚だけを頼り根を這わせ探っていた
自分という存在の謂れを
何者かであろうとして溺れもがきながら
生まれ育った場所にも時代にも違和を
[次のページ]
戻る   Point(12)