絶景/吉岡ペペロ
 
寂しくなって痺れてきた。わなわなして鼻のなかがつんとしてきた。味噌汁があった。指先を伸ばすとますます惨めだった。あたしは手にとってレジにいった。味噌汁がピッとされて店員が袋に入れようとする刹那、味噌汁カップは生きているはずもないのに優しくあたしに染みこんできた。それ以来あたしには困った衝動が身についてしまった。
コンビニの店員さんがあたしを無視してくれてたら、あたしはなんだか安心してプラスチックみたいな無機物になれた。そしてあたしの周りの無機物があたしに優しく染みこんできた。あたしは初潮を迎えるまえに性にめざめた。それまで父に何をされてもめざめなかった性がめざめたのだった。
家にもどるとあたし
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