絶景/吉岡ペペロ
 
かに存在しているところで、でもそこにはあたしと弟しかいないということだけで、あたしは自分の脳をだますようにして弟に種をまかせていた。結局あたしは鈍感だったのだ。あたしには鈍感という才能があるのだ。

父はあたしのほんとうの父ではなかった。母はなんであんな男と再婚したのだろう。怖いもの見たさだろうか。
ほんとうの父はアル中だった。ほんとうじゃない父もアル中だった。怖いもの見たさじゃなかったら、母はアル中の男が好きなんだと思っていた。
でも違ったようだ。母はアル中の男を許さなかったのだから。あたしたちまで見捨てるくらい許さなかったのだから。
じゃあなんで?そんなことはどうでもいい。母はきっと
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