絶景/吉岡ペペロ
ルに入った。
先生はひとりで尾崎豊を熱唱していた。こんなに熱唱して大丈夫なのかと思うくらい熱唱していた。あたしが歌うことはなかった。あたしは捨ておかれたように円形のベッドに背中を置いて天井の鏡にうつる先生を見ていた。拍手もしなくなっていた。つまらなくなっていたのではなかった。
父にされているようなことを先生にされたいと思って待っていた。
尾崎豊のアイラブユーとあたしが鏡のなかの先生を見つめていた。修学旅行のバスのなかでも先生はその歌を歌っていた。
バスのなかであたしは酔いそうだった。吐きそうで困っていたらカラオケ大会が始まった。
カラオケの機械があるわけではないからみんなでマイクを回しな
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