嘔吐しない現代詩人について/……とある蛙
 

その間の風景には
格好をつけさえしなければ
九月だというのにバラの花が
向かいの家では咲き乱れ
塀越しに道に張り出していたり
野良犬と思っていた雑種の犬
が実は飼い犬で買い主と散歩していたことや
歯医者の二階から
朝のあいさつをしているのが
オウムでなく九官鳥だったことや
いろいろ見えてくるはずだ。

塀沿の上で蹲っている猫が
見事なロシアンブルーであったことや
すれ違った乳母車の中が
実は小さな婆ちゃんであったことや
見過ごしてしまってもどうでもいいことがたくさんあって
それでも見過ごすよりは幾分ましな人生を送れるだろうよ
などとチシャ猫に変化したロシアンブルーがつぶやく。

なぁにが詩人だと
後ろ指を指されても相変わらず
くだらないプライドを後生大事に
内蔵脂肪の内側に隠している。
肥満の原因は分かっているのに
そのままぶくぶくと太ってしまって
駅まで歩く事すら億劫になってしまった。

と自称詩人が行く。
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