蒼へ 鏡へ/木立 悟
多数の角
多重の角を持つけだものが
真昼の雨の径に立ち
水たまりの光を
見つめることであたためている
紙が紙に戻る音
空気が空気に沈む音
踊り たたずみ 再び踊る
午後と夕べのわずかな幕間
揺れつづける鏡のなかに
動くことのない景色があり
花や音や泡や粉
それぞれの色に塗り変える
径は黒く
光は霧にそよいでいる
径をなぞる空
空の文字
灰とこがねと羽の文字
鏡のなかの揺るがぬものを
鎮めるように火は投げ込まれ
少しずつ動いてゆく雨の
鎖の軌跡を燃してゆく
蒼い光の前のけだもの
影のはざまを過ぎる影
紙のような 鱗のような
水のような 蒼に染まる
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