秋色夜曲三 <私は 今日も 生きながらえた>/南無一
 

今日も 辛い 一日だった

へとへとになりながらも
私は 今日も 生きながらえた

深夜 重い革靴を ひきずりながら
アスファルトの道を ひとり 歩いて帰る

空に 満月が かがやいている

蝉の声は 遠く消え
草の繁みから 虫たちの声が さんざめく

ゆく風には もう 冬の 凍えさえ 滲んでいる

無常の調べ 悠久の月明かり
この一瞬に 私がいる

耳の底に 沈んだ 過ぎた夏の 蝉の 途切れとぎれの 哭く声が
まるで 自分の声のように 淀んでいる

今夜も 浅い 眠りについて
苦しみの夢に 身を 委ねるだろう

そして 明日も
私は 生きながらえて いるのだろう か?


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