稲妻市へ/手乗川文鳥
わかる わかるよ
「わたしは君の母親ではなくて、君とともだちになりたかった。
そして君と手をつないで、いつまでも同じことばを繰り返して笑いあうような時間を過ごしたかった。
午後三時の陽を浴びて、ぐんと伸びた影を見ていたかった。」
ベルが鳴り
ゆっくりと動き始めた新幹線の丸い窓から二人は手を振る
なぜわたしは一緒ではないのかと言いたげな娘の視線を残したまま
加速した新幹線は空を飛ぶことなく走り去っていった
振り返ると丸い角の神がいて
わたしはインスタグラムに写真を投稿した
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