もう世界の中心で愛をさけんだりなんてしないなんて言わないよぜったい/末下りょう
空欄を探すためだけに、窓の外を見ていた
あまり眺めがいいとは言えない部屋には
ぼくよりも遙かにぼくに近いきみがいる
とるべき態度はこの朝にもなにもない
力強く、瑞々しいサンドイッチを、きみがぼくの手に乗せる
はみでたトマトが朝の光を吸いこみ鮮やかに、無反省にきらめく
冷えた手のぼくは、火傷しそうな野菜たちにかぶりつく
夜に拘束されていた唇が床に転がり
一匹の蟻に運ばれて、巣で待つ女王の餌になる
どう、おいしい?
きみの髪から、朝の鳥に踏まれた枯葉の匂いがした
ベランダにはイメージの断片が打ちあげられている
波打ち際に砂で書いた声を守るようなぼくは
きみに話しかけられ、足首を触りながら
ようやく空を見る
途切れる波の音のなかで
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