萌えて悶えて/ただのみきや
 

だから竹とんぼの刑
小さな善意の拷問と愛の抜き身の殺意が
縺れることもなくコーヒーを飲んでいる
下着もつけていなかったねぼくら
蛇が死んだの言いたげな過去が腹を裂いてね
沈みながら笑ったんだ
あの朝僕たちの死体に黄金虫が群れていたっけ
君の最後の虚勢がビニールみたいに飛ばされて
目も耳も口も
無垢な幼虫だった
きっと太陽の供物になるんだよ
声がドアの隙間からそっと覗く
顔がピザみたい
苦役を演じるダンサーたち
田園の空に鋤を入れる戦闘機の一斉掃射
案山子よ案山子よ案山子さん
自由の末期症状です
あんた延命したい
すこしも
時代について何も語らないまま
ぼくは絡みつく
愛に擬態する
耳鳴りを頼りに




           《萌えて悶えて:2015年8月19日》







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