人の孤独/藤山 誠
 

桜の匂いのする午後に、窓からふわふわと光が入ってきていました。
白いカーテンは、柔らかくゆらゆらと風に揺れていました。
老人は言いました。
「死は、私だけを迎えに来たのだ」
それから老人は死んで、子供たちだけが残るのでした。

ある恋人たちは並んで歩きました。
男の子は晩御飯のことを考えていました。
女の子はお化粧のことを考えていました。
恋人たちは何も言いませんでしたし、
彼らはお互いに、相手が何を考えているのか知りませんでした。
それから恋人たちは手を繋いで、並んで歩いてゆきました。
ずっと孤独のまま、二人仲良く暮らすのでした。
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