人の孤独/藤山 誠
あるコックは料理をつくりました。
鍋からはじっくりと煮込まれたトマトの匂い。
テーブルには真っ白に洗われたシーツの上に、真っ白な皿が並ぶのでした。
コックは言いました。
「ひとさじのスプーンは、二人の口には入らない」
それからコックは、真っ白なお皿に、湯気の立つスープをそそいでいくのでした。
ある登山家は山にのぼりました。
耳が痛くなるほど静かな山の頂に雄々しく立ち、
その景色と、自然の偉大さに身震いするのでした。
登山家は言いました。
「一つの靴は、二人では履けない」
それから登山家は山を降りて、皆に写真を見せて回るのでした。
ある老人はベットに寝ていました。
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