ホットミルク/愛心
半年、わたしがホットミルクを手渡すと彼は静かに目を伏せて、一言、ぽつりと呟いた
いらない
呼吸だけで形作られたそれは、痛いほどに響き、鼓膜を揺らし、脳髄を叩いた
ベッドのサイドテーブルにマグカップを置いた音に、彼は肩を震わせ、膝を抱えた
死んでしまう と 直感的に感じた
今夜眠らなければ彼は死ぬ
うたたねではもう足りない
焦りと不安と恐怖
ホットミルクはわたしのただの自己満足だったのか
考えるより先に体が動いた
わたしより大きかった体を抱き締める
荒い呼吸と泣き声
まるでこどものようで、より強く抱き締めた
背中を撫でながら、優しく語りかける
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