カムパネルラ。/有邑空玖
白く光る雲が流れていく冬空。
夕暮れの橙色が水色と混じり合って、それは綺麗。
烏の群れが西の空へ向かって飛んでいきます。
帰る場所があるの、良いね。
冬の短い日が暮れるのは、何よりも寂しいと思う。
手と手を握って、背と背を合わせても、ぼくたちはひとりだ。
そんな当たり前のことが酷く哀しい。
外燈が長い影を落とします。
影絵なら、ひとつにだってなれるのにね。
遠くに踏切の音が聞こえます。
貨物列車、旅客列車、どちらだって良いけど、ぼくも運んでくれないかな。
だって其処は遠い、遠い。
銀河鐵道、迎えに来てよ。
カムパネルラ。カムパネルラ。
って、呪文みたいに繰り返すから。
手と手を握って、背と背を合わせても、ぼくたちはひとりだ。
そんなのが当たり前だなんて酷く寂しい。
叶わないゆびきりをします。
約束さえ、見失ってしまうのにね。
帰る場所を探しているの。
カムパネルラ。カムパネルラ。
カムパネルラ。
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