【驟雨】志なかばでお亡くなりになられた松山椋さんへ/そらの珊瑚
うだろうと。それらは図書室の壁の丸時計の黒い秒針がひとつ進むほんのわずかな間に、私に落ちてきた直感のようなものだったかもしれない。或いは願いだったのか。或いは都合のよい祈りであったのか。
彼は小さい頃から、身体が弱く、入退院を繰り返していたという。
私は胸がいっぱいになり、ただうなずくばかりだった。
あの時も、本たちがひっそりと息をしている図書室の窓辺から、見慣れた西日が降り注いでいた。彼はその光を浴びて、その人間の輪郭は透けそうなくらい、輝いてみえた。表情は伺い知れない。
ああ、もしかしたら、この光こそ、すなつぶであり、驟雨ではないか。
そう思い当たったのだが、言葉にして彼に伝えられなかったことが今でも悔やまれる。
口を開けば、泣いてしまいそうだったから。
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