【驟雨】志なかばでお亡くなりになられた松山椋さんへ/そらの珊瑚
 
 放課後、中学校の西向きの図書室には、まぶしいばかりの光が降り注いでいた。

 全校六百人ほどの生徒の中で、読書なんて今時流行らない趣味を持つ人は、おそらく少数派だ。調べ物ならパソコンで事足りるし、物語が好きならば漫画のほうが手っ取り早い。
 すすんで、といえば、きこえはいいが、本音は、気の進まない役をやるくらいならという実に消極的で小賢しい、私らしい理由だった。読書好きな私が、図書係に立候補した理由は。
 週に一回、放課後の一時間だけ、図書室の貸出しの手伝いをするのは、それほど大変なことでもなかった。
 というより、四方を本に囲まれているその中にいる時間は、心安らかだったといえる。他者
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