KANASHIKI ZAKKAN/岩下こずえ
 
 悲しき雑感

 時々、怖くなる。なにがって、自分が変わっていくことが。そして、その変化をコントロールできないことが。僕は、これまで愛し続けてきたものをおなじように愛し続けたいし、そういう自分を失いたくない。なぜって、そうすることで、僕は、自分を自分たらしめているような、自分らしさを守ることができるから。自分らしさというものは、親密さが溢れる家みたいなものだ。帰ることができ、そこで休息し、安らぐことができる場所みたいなものだ。そんな場所がなくなってしまったら、僕はどうすればいい?

 家が遠のいてゆく。いや、僕が家から離れていくのだ。それは、見ず知らずのほろ馬車に投げ込まれ、強引に身売りさ
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