盆の歌/藤原絵理子
 

浴衣の帯が苦しくて 不機嫌な顔をしていた
それでも金魚の袋は しっかり握って
夜店の光が届かない 闇の狛犬が怖くて
握った手に力が入った 小さい弟の小さな手


田舎の家の 広い居間で
大人たちが集まって 談笑している
静かなざわめきを 子守唄の代わりに
うとうと 夢見るのが好きだった


ゆっくり回る 走馬灯
影絵の馬は 黄色い目
線香花火は 小さな太陽


この世を去る直前に きっと思い出す
優しかった人たちの 笑顔の匂いと
わけもなく楽しかった夜 遠い夏のことを


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