記憶 忘却/凍月
見上げた夕暮れの青空が
迫り来る夜の黒に飲み込まれてゆく光景
その時僕が感じたのは
何も恐怖だけでは無かった筈なのに
自分が抱いた感情さえ
忘れている
こんなにも忘却が悲しいだなんて
幸せな時間と悲しい記憶と
どちらがより遺るか だなんて
とても考えたくない
答えを知っている気がして
疑問を忘れようと頭を振り続けた
忘れたいものは残っていく
忘れたくないものから消えてゆく
そうだ
裏切られた記憶が蘇る
忘れたく無いものと
やっと忘れられた、とおもった記憶は
大抵が全部残っていて
あなたの事なんて
2秒で忘れよう
破られる誓いなんて
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