貝殻と港のある遠い夢に/りゅうのあくび
 

夢のことは
気にも留めずに

当時こころの病気のことで
なお通院の必要があり
退船する機会を
得なければならなかった

ヨット部のなかでは
見習いの同輩が
合宿中に水分を
取ることが足らずに
肝臓がいかれて
やはり夏合宿の
生き残りが独り
退院をしたばかりなことも
気掛かりでいた

結局のところ
航海の安全を守るために
僕は遠い夏の
硬い貝殻に
なることを
決断したのだった

だから
もはや戻ることが
出来ない港のことを想うと
秋の海風のような
切なさをいつも感じる

やんちゃな秋猫と
まばたきを
かわすたびに

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