夏も終わりの・夜の海/南無一
 
夜空から 零れ落ちて きませんか
破けた麦わら帽子は 夏の落し物
黒い海にむかって ほうって しまいましたか
波は それを さらっていって しまいましたか

そうして あなたのなかで ひとつの季節が
終わったの ですね

  ?<夜の海>

たとえば薄暗がりの 寂しい小道
ひとり歩きながら
夕焼けの なごりなど
見詰めていたりしている
そんなときに
思い出す人は 誰だろう?

たとえば砂浜に 座って
貝のかけらなど 指でいじりながら
海など眺めている
そんなときに
寄せてくる想いは 何だろう?

人はみな 儚い原形を 夢見て
そして
夢見たことさえ 忘れてしまう
それが ただ
あたりまえのこと だと

この海の 眩しすぎる碧さにも
いずれ
夜の色が 滲んでゆくだろう
それでも 海は
うねりつづけ
誰の目にも 見えなくても
海は うねっているだろう
たとえ この夜に
海が塗りこまれて しまっても
ぼくの前に 海が あるのだと
感じられれば それで いい



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