S市/山人
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乾き物の肴で
覚えたてのタバコを吸っていた
みっチャンという酒場で
飲んでいたんだ
ショーケースの中には
ショートケーキやシュークリームが並んでいたし
売店の女の子は可愛かった
ミニを履かされていたからきゅんとした
女子寮で膝を立てて下着を見せる子が居た
街を歩いていると
金木犀のにおいがした
秋、鈴木と言う男とよく歩いた
スパゲティ屋でワラエル夢を語っていた
住んでいた周りに側溝があり
夏は強烈に痒い薮蚊が出た
熱帯夜
冷たい風呂に浸かっても眠れなかった
仕事中にアイドルの歌をうたっていた水野は
この間の訃報欄に載っていた
佐々木さん
小娘を弄び堕胎させた
フィアンセの眼球は取り除かれていた。
なんだか今
ひどく僕は疲れていて
紙芝居のような
思い出を辿っていると
なんだか
瞼がふくらんで
頭の中が痒くて仕方ない
丸い椅子に座り
パチパチと炎の前で
それらを眺めている
絵は一枚一枚炎にくべられ
きな臭いにおいとともに
火の粉が舞い上がった
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