S市/山人
むかし、三年ほど住んでいた中都市を車でめぐる
広大な敷地にいくつもの工業団地が立ち並び
その周辺には刈り取られた田圃が季節を煽るように敷き詰められている
なつかしい名の鉄工所や、古いビルもまだあった
学校を出て初めて勤める地へ、狐色のコートを羽織り、ローカル線に乗った
初めてもらった給料の少なさに驚いた
それでラジカセを買ったり、鳥の巣のようなパーマをかけた
白衣の白さに気恥ずかしさを感じながら、菓子づくりもやらせてもらえた
文通をしていた
手紙を大家さんから受け取ると長大な文章を書いては投函していた
文字数の多さが募る思いの大きさだと思い込んでいた頃だった
あ
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