ルクレティウスの夜/あおば
 
        150822

あの山越えて、野を越えて
芳子先生が好い気分で歌いだす
平均律の授業の時の楽しみだ
先生はオペラ歌手を目指してた
美声だったので
声域が広かったので
少しおっちょこちょいだったので
議論好きの男たちに囲まれた
学生時代の因果の果てに
中学数学教諭と結ばれた
そんなのすぐに破綻する
野次馬の嘶きも力に換えて
二人は道無き原野を疾走した
それからふたりはいつまでも
しあわせにくらしましたとさ
とは書けない共学の定義が
首長が異なる度に
勤務校により変わるのに我慢できない
いつでも好きな歌を歌っていたい
いつでも好きな
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