半魚人の夜/梅昆布茶
 
きみの夢は軽いけれどもきみは重い
人間ひとりってたいそうな荷物だ

きみを背負うには僕がかぎりなくかるくなければならない

すべてのものをかかえて吊り橋は容易には渡れないものだろう

僕の祖先は半魚人だってきみはいうが
かすかにさかなだった記憶と猫だった記憶と
カマキリだったらしい記憶が交錯するが

いまはせめて人間でありたいとおもっている
こっそり誰かに名前をつたえるたびに
風がそれを吹き消して行くさ

十万億土に風は吹く
さいごの砂のひと粒までも捲き上げて逝く

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