教会のタンポポ/吉岡ペペロ
 
バスに揺られて教会に着いた

教会のそばに咲くタンポポに

虫の影が

まぼろしの縁取りのように過ぎていった


駅舎で見知らぬひとと待ち合わせるようにバスを待った

髭を生やした黒いスーツの男がちらちらと見てくる

小柳ルミ子みたいな女が缶コーラをあける

少年の兄弟がどこかに座ろうとする目付きで無愛想に立っている

ちからなく蝶々が地面すれすれを飛んでいる

ここに差す山陰のひかりは機械油と古い畳の香りがした


バスに揺られて教会に着いた

教会のそばに咲くタンポポに

虫の影が

まぼろしの縁取りのように過ぎていった







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