星の人/ひさし
やって朝になるか知ってるかい。
お月さんがクルリと裏返って、お日さんになるんだよ。
うそじゃないよ。おばあちゃんは何度も見たんだから。
おぉ、何だか凄そうだ。その瞬間を待ちました。
見逃すまい……。見逃すまい……。
ですが、祖母の背はゆったりと心地よいリズムで揺れます。
子守歌のささやくような優しい歌声と相まって、
その催眠効果はいやが上にも高まります。
案の定、クルリを目撃することは叶いませんでした。
目覚めた時には、妹が母の胸でオギャー、オギャーと泣いていました。
テニスボールがそのまま裏返る空間。
宇宙にはそんな次元の空間があります。
何かの折に教えてあげようと思っていました。
知ってるわよ。
右の手袋を裏返して、そのまま右手にできる空間もあるのよね。
ひぇー……。
どうして、そんなことまで知ってるの。
祖母は私の声まで裏返すのでした。
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