たそがれどき/……とある蛙
 
決こそルールなんだ。民主的な国家のルールだ。
自由なんぞ国がなければ無意味だ。
国があってこその君たちだ
国が一番大事だ。
国のためには何でも許される
法律など無意味だ
憲法なんぞ無意味だ
国があってこその法律だ、憲法だ。

一羽の鴉が窓枠をめがけて飛翔し
短い窓の中に鴉が夕陽と共に映る。
鴉の叫びが大人の意識を覚醒する
何のために窓枠に近づくのか
何のために夕陽の中を飛翔するのか
既にビルから吐き出された老人は
鴉の叫びを聞かない
その視線は動かない
二度とビルには来ないのだ
生きて帰ってこないで死んでゆく

短い窓に取り残された子供たちは
大人達の正義を虚ろな眼で聞く
大人達の理念とやらを虚ろな眼で聞く
小さな窓の外には鴉
夕陽は沈み漆黒の闇が
もう古ぼけたビル街を覆ってゆき
ビルの中に鴉の鳴き声のみ響く。

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