月の民/dopp
 
ご飯の時間だって」とリクトが言いました。アインはもう一度、今度は真っ直ぐに月を見ました。目が痛くなるような光で、そのくせ輪郭ははっきり見えました。嘘みたいに丸い、張り付いた月でした。アインは、「どうしてあの月は沈まないんだろう」とつぶやきました。空にあって、沈まないのはあの月だけでした。いつ見ても同じ、こうこうとした光を注ぐ月です。いつまでもいつまでも光っているくせに、追いかけ続けていて気がつくと、1日ぐるりといっぱいに大地をひとまわりしただけだったり、ジグザグに歩き続けただけだったり、とにかく動きがつかめないのでした。逃げられてるみたいだなとアインはよく思いました。
「ご飯だって言ってた!」
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