並四日記 3号至福の時を過ごす/あおば
 
なものだ
帰国の夜汽車の中
夢も見ないでうとうと眠る
故郷の東京に帰る
東京の田舎に帰る
冬でも集中暖房で
蛇口を捻れば
いつでもお湯が使えた満州のお屋敷から
床暖房でほかほかの自分の部屋から
井戸で水を汲み釜に入れ
土間の窯で沸かす
暖房は囲炉裏だけ
火鉢を使ったことあったかしら
雪は余り降らないけれど
寒い冬の冷たい水仕事にも耐えねばならない
そんな日本の東京の田舎に帰るのだ
夢みがちの満州国での生活と厳しい現実的な日本国と
比較するのは無理なのだ
無理を承知で生き抜いても
めがねの無い生活に戻れないように
めがねに合った顔になっていた

{引用=初
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