笑いの刑/ただのみきや
躓き 転び 血を流し
無数の生きる死者と死んだ生者が
後から後から連なって
叫んでいる
黒い柘榴のような
都会の割れ目から
白檀のけむりが蛇のよう
夏が化ける 汗と血とスイカの 白い
瞳に揺れるボウフラ
閉じながら 回転し
ゆっくりと 静止する 幽霊たちの
揺らす蜘蛛の巣 一瞬の四十万に
百万もの 嘘を孕んで
声もなく氷の礫 道が続いている
眠りの 深い 穴から 戻らず
朝陽と格闘するクジラだった
生きなければ
黄金の刑罰とはならない
肋骨を引き抜いて剣に杖に
裸だ 裸の王様女王様
裸の乞食
裸のエンペラー
裸の国民
雑誌のグラビアみたいに笑えばいい
仏像みたいに笑えばいい
言葉だけで笑えばいい
君たちも笑いの刑だ
心臓に咲くぞあれやこれやハハハ
《笑いの刑:2015年8月12日》
戻る 編 削 Point(21)