雨降亭/Debby
 
雨降亭はとてもちょうどいい位置にある。
駅から近すぎず遠すぎない
そういう場所にある。
わざわざ行った、というあの心地よい疲労感と
少し足を伸ばせば、というあの怠惰な感じ
その丁度真ん中にある。

雨降亭という名前からして
例えばあなたが洋食屋を始めるなら
そんな名前はつけないだろう
という感じがする。
それは架空の物語の中にある架空の洋食屋で
あなたの周りには実際のところそんな店はない
そんな感じがする。

八月になって店主は
「ちょっと休みます」という貼り紙を残して
どこかへ消えた。
でも、心配はまったくない
彼のフェイスブックを覗けば
真っ黒に日焼けし
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