左右非対称/こうだたけみ
 
か、いまいちわからなくなった。動かなくなった右手を置き去りにして部屋を出る。階段の三段目に足をかけたとき、外の騒々しさがふつりと消えた。
 台所へ行くと、集団の中心から解放された姉さんが戸棚の前に突っ立ったまま、あたしが食べ忘れた芋を食べていた。もそもそと口を動かして、いつまでも飲み下そうとしない。あたしは黙ったまま、冷蔵庫から薬缶ごと冷えた麦茶を出してきてコップに注ぐ。姉さんの左手から芋を取り上げて戸棚に戻し、その真っ黒な掌にコップを押しつけた。姉さんは口の中で何か言った。それは「ありがとう」とも「いらないわ」とも聞こえたのだが、「もうだめね」という意味なのだと直感的に思った。
 あたしは、
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