船出/しもつき七
 



舟に乗って川を渡る。きれいじゃない水に腕を浸して、汚れたワン
ピースのすそから、小麦色の脚をのばしている、太陽もない、だれ
もこない、きみが舵をとったくせに、行方不明なんておかしい



  きみの宝物はなに。

  危うさが私の宝物だった。



やがて岸が見えなくなって
あんなにうるさかった喝采もいまは恋しい
べとつく海風がぼくたちを運ぶ、港町の沖合いまで


舟に乗って川を渡る。きれいじゃない水に腕を浸して、髪も濡らし
て、おでこに付いた泥を、拭ってやると笑うから、まぶしい、湯気
を放つように明度を上げていく、小さい体を抱いている



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