船旅/ただのみきや
乗り合わせた連中と
サイコロ振ったりカードを捲ったり
酔っぱらって歌ったり
ここで生まれた
もの心ついた頃には船の上
過去の航跡をぼんやり眺め
濃霧に満ちる行き先に目を凝らす
詳細な日記をつける奴は頭が良い
いつでも自分の内のドアから出歩いている
阿呆は阿呆なりに
あたまを信天翁にして解き放つ
時空を鳥瞰してみたくて
だけどみんなてんでんばらばら
割れた鏡のひと欠片
僅かな霧の晴れ間に
自己を無理やり映そうとするものだから
舵がないから舵輪もない
帆もなければオールもない
動力もスクリューもない
だから船長も船乗りもいない
だけど仕切り屋はい
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