この指とまれ/卯左飛四
”にとまるなんてことは
到底不可能で
どうしてよいものかと
もじもじ居心地悪そうにその身をよじらせる
きっと
「とまれ」といって突き出した“この指”が
天を向いているためじゃなかろうか
普通、地に向けて差し出す人もいないけれど
あまりにもつんときりりときっぱりと
空を仰いでそびえている“この指”に
みんな近寄りがたいのじゃあるまいか
お釈迦さまは、生まれてすぐに
「天上天下唯我独尊」といって
天と地を同時に指差されたというではないか
それなら
“この指”以外の指を一緒に、地に向けて差し出そう
しかし
「とまれ」と名づけてしまった“この指”を
使ってしまった後で
いったいどの指を出せばよいのだろう
私が迷う間も“この指”は
しきりにその身の孤独を恥じながら
つんときりりときっぱりと
天を仰ぎ立ち尽くしたままで、いる
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