戴冠夜/木立 悟
 





ひとつの金属が鳴り
かけらのように冷えてゆく
響くことなく かがやいてゆく


背中を押す手が
ふいに昇る
何本かの指を
残したままで


声を映す手鏡に
映るのはただ雨ばかり
鏡の声も 手の声も
雨の声に流されてゆく


風のなかの冷たい粒が
わずかにひらいた窓にたまり
壁にこぼれ 消えてゆく
灯と鱗を縫いながら


熱は青い骨に昇り
指は戻り 鏡からこぼれた声を拾う
直ぐのはずの径は曲がり
曇はさらに行方に刺さる


水色の空と低い声が
どこまでも途切れることなく
夜の向こうに立ちはだかり
冠の内側を巡りつづける





























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