エスキース/草野大悟2
 
蜘蛛が
雨糸をゆらすと、
針の穴ほどの
光たちが
きらきら
とけあい、
うっすらと
午前十時五十分の星座が
あらわれる。

めざめている
、という夢をみていて
にげおくれた妖精が、
かげをふまれ、
うつつ(現)、と
よばれるようになったとき、
糸のまんなかで
はりつけになっていた太陽のむくろが
背中をわって
きみの、「 今」、をうんだ。

涼やかなうすい翼は
かがやきをなくし
骨のような空をさまよいつづけ、
風をよぶ声は
あおくひかるあしあとになって
雪原にのこされていたけれど。

戻る   Point(3)