図書館/葉leaf
 



一冊の本を収めるためには
大きな空間が割かれなければならない
一冊の抱懐する情報の連なりは
本そのものの行為の空間として
潤沢な広がりを要求するから
すべての本の必要とする空間を
複雑に骨折させた痛みとして
図書館は柱に雷鳴を走らせている

本が陳列されている中を歩くと
本は様々に発火し発光する
それぞれの情念の道筋に沿って
それぞれの顔の表情に合わせて
本は顔でもって読者と対峙する
古い顔を燃やし尽くしては
どこまでも新しい顔が生まれる

図書館では本を借りる必要もないし
ましてや読む必要もない
本が書架から転がり落ちて
その肉体をはだけてしまう瞬間を
絶え間なく幻視しつつ
読んでみたい本の顔を一心に見つめる
どんな挨拶も互いに拒絶し合いながら

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