贈り者/やまうちあつし
私は上手に
贈ることができない
どうもわざとらしくて
どこか恩着せがましくて
こちらもあちらも
申し訳ない気持ちに
そして上手に
贈られることができない
もらったことに気が付いたとき
いつでもそれは後の祭りで
贈り主はそこにはいない
星の光が届いたころに
その星はもう
存在しないように
さて
人が
最上の贈りものをするとすれば
それはたいてい
自分でも気付かない間のことだ
他愛ないあいづちや
ちょっとしたはにかみ
何気ないしぐさや
小さな掌でこちらの小指を
ぎゅっと握ってきたり
自分でも知らないうちに
その人のいちばん美しいものを
誰かに手渡していることがある
だからお礼を言おうにも
上手く伝えられない
言っても不思議がられるだけだ
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