群がる/あおば
ろう
ある程度のまとまった金額は貰えた筈なのにそのことは
一切伝わっていたない
銃後の事情に疎い父は、酷い食糧不足も知らず
威張り腐っていた元将校を袋叩きにする同僚を横目に
重くない程度の缶詰をリュックに入れ、元気な姿で
復員した
家には、ろくな食料もなく、小さい子供らが群がっていた
こんなことなら、持てるだけの食料を持ってくるんだったと
後悔したかは知らないが、とにかく、銃後では決して食べられない
ご馳走の缶詰を持ってきてくれたのは確かだった。
知っていれば、もっと運んで来るんだった
食べ物なんかには全然不自由してなかったんだから
どこに配属されるかは偶然ではなく、かな
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